《結論》
公正証書遺言をWeb会議でできるようになる可能性はありますが、公証人の
判断次第になるものと思われます。
《現在の公正証書遺言のやり方》
現在は、公証役場において(※)、①公証人、遺言者、証人2人(以上)が
一堂に会し、②遺言者、証人の本人確認や③遺言者の遺言能力の有無(認知
症などで有効な遺言ができない状態ではないか)や④遺言内容が遺言者の意
思に沿ったものであるか等について、公証人が確認することによって行われ、
最後に⑤公証人、遺言者、証人が遺言公正証書原本に署名・捺印します。
(※)遺言者が老齢、病気等の場合、公証人が自宅や医療機関に出向くこと
もあります。
《改正公証人法では》
改正公証人法のポイントは、次の3点です。
(1)本人確認として電磁的方法によることが可能となりました
(2)これまで関係者が公証役場に出頭して対面で行うこととされていた手続
について、ウェブ会議を利用することが可能となりました
(3)現在は、公正証書原本は書面により作成し、保存されています が、原則
として電磁的記録をもって作成することとされました。この場合、書面に署名・
押印をすることはありません。
《遺言公正証書はどうか》
上記3点から、一見すると現在の手続き(上記①~⑤)の全てに対応(確認)
するやり方が用意されているため、すんなりWeb会議によることができそうに
も思われます。
《「公証人が相当と認めた場合」という要件》
ここで、立ちはだかるのが、公正証書をWeb会議でやるためには、「公証人が
相当と認めた場合である」という要件です。例えば、画面からは見えないとこ
ろで、認知能力の著しく低下した遺言者に誰かが指示を与えたり、サポートし
てらどうでしょう。これでは、上記③遺言能力④遺言者本人の意思によるもの
か、ということを担保できません。そのため、公正証書遺言の場合、実際に
Web会議で行えるかどうかは、個々の場合に公証人の判断によることになるも
のと思われます。
《改正公証人法の施行時期》
改正公証人法は、公布日(令和5年6月14日)から2年6カ月以内の政令で定める
日に施行されます。